恐ろしかった

今日、パソコンを納入して模様替えをしたら部屋がグチャグチャになったので

おふくろの部屋を間借りして一人で寝ることになった。

おふくろの部屋で寝るのは子供の頃以来だが、あんまり気持ちの良いものではない。

特に嫌いなのが天井。木張りで木目が浮かんで見える。

子供の頃は人の顔に見えたりして恐かったもんだ。

電気を消して、手をぴたりと両脇に揃えて仰向けに寝る。

ちょうど、起立の姿勢で寝るかんじだ。

どたどたと足音がうるさい。

いぶかしく思う前に足音はどんどん大きくなっていった。

走っている。

どたどたと大きな音をあげながら俺の布団の周囲をぐるぐると走っている。

足音は三周走ると、俺の布団をひょいと跨いで、枕元で止まった。

枕元に誰か、いる。

嫌な汗がじっとりと浮かんできた。

心の中で「ありえない。」と思いつつ、「おふくろだろう。」と見て納得するために

瞼を開けようとした。

開かない。

目を開けようとしても、瞼がピクとも動かない。

しかも見えないのに枕元に立っているのは女性だと、判るのだ。

長い黒髪で、白いワンピースを着ており、顔の造作はよく判らない。

ただ、俺を枕元から見下げて、楽しそうに薄く笑っている。

それでいて表情からは俺を殺そうという意図だけはうかがえるのだ。

瞼が開かないならとにかくかけ布団を持ち上げようと腕を動かした。

動かない。

力は入れている。しかし、まるで全身が見えないガムテープでぐるぐる巻きに

されたように動かない。

全身の力を振り絞って、とにかく両手だけでも動かそうとする。

すると、拳を握っていた両手が開いた。

「やった!」と思った瞬間、

かけ布団が俺の顔にかぶさった。

布団が口にぴったり張りついて息が出来ない。どんどん苦しくなってくる。

もう無我夢中だった。動く筈の無い手足に、

とにかく力をこめてバタバタと動かそうとする。

不意に金縛りがとけた。俺は起きあがって枕元を見る前に腕を横に振るって

ブン殴っていた。

すると、女の顔が俺の拳にぶつかる瞬間。掻き消えるように姿が薄れていった。

回りを見まわす。

姿は見えないが、気配だけはまだある。

隣の部屋をみると、おふくろは布団にもぐったまま、寝そびれたのか

半落ち」を読んでいる。俺の様子には全く気付いていない。

「物音とか立てた筈なのに。」そう思うと、寒気がした。

おふくろに確認しようと思ったが、「何の物音もしなかった。」

と言われるのが恐くて何も言わずに布団に戻った。

まだ、気配はする。俺が寝たら襲いかかってくるつもりだろう。

仕方ない。とにかくさっきの要領で追い払うしかない。

俺は瞼を閉じた。

ここで、目が醒めた。

暫く、自分の部屋を見まわして、五分ぐらいしてから気付く。

すげーおっかない夢だった。

午前1時ごろ寝て、時計をみたら午前2時、1時間と寝ていないうえに汗びっしょり。

あまりにもリアルだったんで日記に書いといた。