夕凪の街 桜の国*2雑感

このマンガを読んだときに、久々にけっこう感動したのでどの辺りが良かったのかを書きまとめたもの。
ちょうどパソがふっとんだ頃なので、別のところにまとめて置いたのをここに記載。これはあくまでも俺の主観なんでそのつもりで。

原作のページを指定したりネタバレしているところがあるのでそういうのが嫌な方は読まないで下さい。あと、このマンガ読まないで今日の日記を読んでも何も得るものはありませんよ。

夕凪の街
P9
 皆美が川原を歩きながら「しんだはずだよ おとみさんー♪」と歌っていると、
子供が二人歩いて来て、前を歩いている子に、
「待って みどりちゃん」と呼びかけるのを聞いて、
一瞬黙る皆美。
その後また「・・・いきていたとは おしゃかさまでも しらぬほとけの おとみさん〜〜♪」
と続くところ*1
P14
皆美とフジミが銭湯に入るところ。入浴してる女性達はやけどや傷を縫ったあとがある。*2
P21
ラストのコマで打越と皆美が肩を抱き合うと、
P22の最初のコマで二人がキスすると、川面に被爆者の死体が浮かんでから、P25で地面の草が皆美を捕らえて絡みつく「ところまで。*3
P30
寝込んだ皆美を打越が見舞いに来た帰りに
「つきがとってもあおいから とおまわりしてかえろう♪」
と歌っているのを見て、皆美が
「・・・もうきょうかぎりあえぬとも おもいではすてずに きみとちかったなみきみち ふたりきりでさーかえろう♪」と歌うところ*4
P34
ノローグ
このお話は
まだ終わりません
何度夕凪が終わっても
終わっていません*5

桜の国(一)
P37
扉絵
背景に描かれているのは水の塔*6
P45
東子ちゃんが看護婦をみて、うっとりするところ*7
P49
おばあちゃんと七実の会話
「鼻血出したんじゃろう?」
「ああ・・・おばあ様 急にめまいが」
しゃがみこみ顔を伏せるおばあちゃん
「おばあちゃん? ごめん うそだよ」
黙って七実の頬をつねるおばあちゃん*8

桜の国(二)
P64
おばあちゃんと会話*9
P65
2段目右はしのコマの女性*10
2段目真ん中のコマの女性*11
4段目のコマに出てきた女性*12
P67
川原で待っていた老人*13
P81
平和資料館を見学した後で東子が寝込んだまま、七実に向かって喋る
「わたし 看護師失格かなあ・・・」
「あれが家族や友達だったらと思うだけでもう・・・」
七実
「関係ないよ」
「そのほうがまともなんだよ 多分」*14

P93〜94
生まれる前の七実のモノローグ。
この台詞とP98の旭の台詞で七実が皆美の生まれ変わりであることが暗示的に示される。
この物語はここで七実と旭が日常に帰っていって終わるが、
 この後に夕凪の街の最後のモノローグを読むと胸に染みるものがある。
皆美が死んでも

何度夕凪が
終わっても
終わっていません
と入るモノローグ。
これは被爆者の2世である七実ですらも、いつ母親が被爆した影響がでるかは分からない。だから
何度夕凪が
終わっても
終わっていません

と閉めざるを得なかったのだ。同時にここまでの完成度を誇る物語に俺は純粋に感動した。

追記
P36のカット
皆美が京花の髪を梳いているカット
物語を全部読むと、七実が母の髪を梳いているカットとしても成立しているのがわかる。
そして母の髪を梳く、という行為は母が幼いころに死んでしまった七実には一生得られないものなのだ*15

あと京花ちゃんはかわいくてハァハァしました。

*1:P24で8月6日に妹の翠(みどり)が行方不明(おそらく死んでいる)になっていることがわかる。

*2:ここで1コマ10年前の風景がインサートされるここで予兆のコマが入ることでP22からの展開が生きてくる。

*3:ここは素直に面白かった。現実で幸せを体感するたびに、10年前の原爆が投下された日が浮かび上がってくる描写は秀逸。

*4:このあと皆美はすぐに死んでしまい、話は終わる。二人は本当に会えなかったのだ。

*5:これは単純にとれば、現在も続いている被爆者、及び被爆者の子孫の方々の苦悩と受け取れるが、桜の国(二)を読み終えるともう一つの物語が見えてくる。これに関しては後述

*6:8月6日の原爆が落ちた日以前にあるこの建物が描いてあることで、七実にとって、母が死に、祖母が死に、弟がぜんそくで入院していたころに住んでいたこの町が彼女にとっての被爆の象徴であることが分かる。このことはP86〜87の語りでも読み取れる。

*7:P51で夜中まで「将来のゆめ」の作文を書き直しており。その後P51で看護師になったことが判明。おそらくここがその原点かと

*8:P50、P51でこの日おばあちゃんの検査が悪かったことがわかる。しゃがみこんだのは、悪化の兆候とも考えられるし、P84の台詞で思ったようなことを鼻血を出したことから連想したのかも知れない。

*9:多分ワンピースを縫ってもらった古田さんではないかと

*10:多分、P32 1段目真ん中のコマに出てきた女性

*11:多分、P32 1段目左端のコマの右側の女性

*12:多分、P32 1段目左端のコマの左側の女性

*13:多分、打越さん

*14:東子は七実の母親とおばあちゃんが被爆のせいで死んだかも知れないことに気づいていない。人間が最も残酷なのは無知からくるものだと知らされる。このマンガである意味一番好きなシーン

*15:カットの隅に「0408ふ」と描いてあることから、書き下ろし分も含めて最後の頃に書かれたものと推測される。