『サマータイム・キラー 』

 ジュブナイルを目指して書いた新作を掲載します。感想やご意見はコメント欄にお願いします。
■注意事項
 本編は『ダブルクロス2nd Edition』のシナリオである。プレイヤーは読まないこと。
なお、本文中で(DX・p*)と書かれていた場合、
ダブルクロス2nd Edition』の、(BU・p*)と書かれていた場合『ブレイクアップ』のページを示している。
●シナリオスペック
▼プレイ時間、プレイヤー人数
3〜4時間、3〜5人
■ストーリー
 沿岸都市T市において、毎年夏になると出没するジャーム、”サマータイム・キラー”。
その正体は時間跳躍能力を持った少女、飛鳥七海であった。
彼女は8年前に両親と共に”サマータイム・キラー”に襲われ、両親は死亡し、自身も助かるが”サマータイム・キラー”のウイルスに感染してしまう。そして今年の8月31日に”サマータイム・キラー”を殺した時にその正体が未来の自分だと知り、その衝撃から”サマータイム・キラー”というジャームになるという運命に囚われていた。
 彼女はこの時間の循環を断ち切るべく、PC②に『飛鳥七海を殺してくれ』とメッセージを伝える。全ては”サマータイム・キラー”を滅ぼす為。そして、彼女が愛したPC①を守る為。
 PC達は運命と乗り越えて、8月31日の夜に”サマータイム・キラー”を倒せるのだろうか─。
▼ステージ
沿岸都市T市*1
■プリプレイ                    
●クイックスタート
クイックスタートの指定は次の通り。
PC①:不確定な切り札(DX・p58)
PC②:錆び付いた刃(DX・p74)
PC③:水晶の瞳(DX・p60)
PC④:黒い天使(BU・p18)
PC⑤:幻の造り手(DX・p72)

フルスクラッチ
▼カヴァー&ワークスの指定カヴァー、ワークスの指定は次の通り。
PC①:高校生/指定無し
PC②:探偵/指定無し
PC③:指定無し/UG支部
PC④:指定無し/UGチルドレン
PC⑤:ジャーナリスト/指定無し

●PC間ロイス
 キャラクターの作成が終わった時点で各プレイヤーにPC紹介を行わせること。その後、PC間ロイスを結ばせて、メインプレイに移ること。ロイスはPC番号順にとること。つまり、PC①→PC②→PC③→PC④→PC⑤→PC①という順番である。

●シナリオ情報技能
PC全員にシナリオ情報技能として、<情報:T市>を1レベル渡すこと。
■シナリオハンドアウト

各PCには以下の設定がつくので、キャラクター作成の時によくプレイヤーと相談すること。
PC①:飛鳥七海という少女を大事に想っている。男子が望ましい。
PC②:過去に『サマータイム・キラー』と出会い、約束をしている。
PC③:『サマータイム・キラー』を調査するために中央評議会(アクシズ)からT市に派遣された。
PC④:佐上道明*2の元でよく調査をしている。
PC⑤:毎年、『サマータイム・キラー』の事件を取材している。

ハンドアウト

PC①用ハンドアウト
ロイス:飛鳥七海(あすか・なつみ) P:純愛/N:不安 Dロイス:生還者
クイックスタート:不確定な切り札
カヴァー/ワークス:高校生/指定無し
 キミは去年の夏祭りで、飛鳥七海と知り合った。その場で別れて会えずじまいだったが、キミはいつしか彼女に惹かれていた。しかし今年の夏、また彼女と再会できた。しかも、一緒に祭りに行かないかと誘われたのだ。キミにとってこれからが本当の夏の始まりだった。

PC②用ハンドアウト
ロイス:“サマータイム・キラー” P:誠意/N:脅威 Dロイス:古代種
クイックスタート:錆び付いた刃
カヴァー/ワークス:探偵/指定無し
 キミが陰陽師と呼ばれていたころ、物の怪と出会った。物の怪は、「再び私と出会ったら、その夏に少女を殺すのを手伝って欲しい。」と言われた。その物の怪が“サマータイム・キラー”と呼ばれているジャームだと判ったのは千年以上経った現代だった。その物の怪とはまだ再会していない。

PC③用ハンドアウト
ロイス:霧谷雄吾 P:信頼/N:憐憫 Dロイス:特権階級
クイックスタート:水晶の瞳
カヴァー/ワークス:指定無し/支部
 キミは中央評議会(アクシズ)からT市に支部長として派遣された。旧くからT市で夏に起こる殺人事件、“サマータイム・キラー”。ジャームの仕業であると判りながらも日本支部ではこの事件を解決出来ず、霧谷雄吾からの依頼で中央評議会の構成員であるキミが直々に解決に乗り出したと言う訳だ。事件を解決できるかは、キミの采配にかかっている。

PC④用ハンドアウト
ロイス:佐上道明 P:尽力/N:隔意 Dロイス:複製体
クイックスタート:黒い天使
カヴァー/ワークス:指定無し/UGチルドレン
 佐上からキミは調査の依頼を受けた。なんでも日本支部でも手に余り、中央評議会からスタッフが招集される程の相手らしい。しかも佐上でも「不明な点が多すぎて推測できない。」と言っているのだ。キミが真実を探り当てるしかなかった。

PC⑤用ハンドアウト
ロイス:“サマータイム・キラー” P:好奇心/N:憤懣 Dロイス:変異種
クイックスタート:幻の造り手
カヴァー/ワークス:ジャーナリスト/指定無し
 キミは奥村秀行*3から、今年も訪ねられる。「今年もT市に取材に行くのか?」そう、毎年のことだった。最早都市伝説となりつつある、夏にT市で起きる殺人事件“サマータイム・キラー”。事件の真相をスッパ抜けば、もちろん特ダネだろう。しかし、それ以上に殺人に対する義憤を感じていた。今年も取材に向かわねば。真実を掴む為に。

■オープニングフェイズ                 
真夏の夜の夢(PC①)
◆描写 
 もう一つの世界。もう一つの時間━。
 真夏の夜の海岸にPC①はいた。空には花火が舞って美しい花を咲かせているが、花火はそのまま消えない。
まるで時間が停まったかのように。
 砂浜には飛鳥七海がいる。PC①が愛した彼女は胸と左目を貫かれて冷たくなっていた。
彼女も時が停まったように動かない。
 そして、PC①の胸も鋭い爪で貫かれている。貫いたのは全身を紅く輝かせているジャーム”サマータイム・キラー”
全身から力が抜けていくのを感じる。PC①は今、死亡した。
◆解説
サマータイム・キラー”がPC①を殺害するシーン。ここから七海は”サマータイム・キラー”として覚醒し時間跳躍を繰り返すこととなる。*4
◆結末
 ”サマータイム・キラー”が爪をPC①の体から引き抜くと、糸が切れた人形のようにPC①の体は砂浜に倒れる。
サマータイム・キラー”はしばらくそれを見つめていたが、やがて決意したように呟くと砂浜から消失する。
「今度こそ、今度こそ助けて見せるわ。だって、好きだから…」
誰もいなくなった砂浜に残された”サマータイム・キラー”の呟きは確かに七海の声だった。*5
●夏の始まり(PC①)
◆描写 
 夏休み。透き通るような青い空に真っ白い入道雲が絶妙なコントラストを描く中、キミは彼女と偶然再会した。白い長袖のワンピースを着た飛鳥七海は去年の夏祭りの時に始めて出会った女の子だ。
◆解説
 PC①が七海と再会する現在のシーンと、去年の夏祭りで出会った過去のシーンである。
▼セリフ:飛鳥七海
「あ・・・お久しぶりです。PC①さん、でしたよね。」
「七海です、飛鳥七海。覚えてますよ。去年助けて貰って助かりましたし、その……かっこよかったし。」
◆結末
キミは七海と出会った夏のことを思い出した。
◆描写2
 ─去年の夏祭り。親友の武士(たけし)とその彼女*6、そしてキミは夜の花火を見るために高台にある神社の裏手にいた。三人揃って花火をバックに写真を撮るためにデジカメのシャッターを押してくれる人を探していると、ワンピースを着た少女が男に絡まれていたのを見かけて、助けたのが飛鳥七海との出会いだった。
▼セリフ:武士
「なあ、PC①。ここで花火をバックに三人で写真撮ろうぜ?誰かシャッター押してくれる人探してきてくれよ?」
(彼女の手を握りながら)「ダメダメ。俺が探しにいくとコイツが寂しがるもん。」
(七海を連れてくると)「へぇ。可愛い子じゃん。ま、俺の彼女には負けるけどな。」
(七海がシャッターを押した後で)「えーと、七海ちゃんだっけ?どう、ついでにPC①と二人で一枚撮らない?」
▼七海
「あ、あの……止めてください。」
(PC①に助けられると)「あ、ありがとうございます。」
「シャッターを押せばいいんですね。あ、あたし七海っていいます。飛鳥七海。撮りますよー。」
(写真を撮るようにいわれると、少し頬を染めて)「PC①さんが迷惑でなければいいですけど…。」
▼男
「いいじゃんか、夏祭りに一人でいるんだろ?付き合えよ。」
(PC①に邪魔されると)「何だてめぇ?」
(PC①に追い払われると)「に、人間じゃねぇ…。」
◆結末
武士は気が利く友人だ。すかさずキミと七海を二人並べると、夜空に花火が浮かんだところでシャッターを押した。二人並んだキミ達が笑ったところで一枚の写真となった。
◆描写3
 キミがそうして思い出していると、七海はキミを見て恥ずかしそうにいった。キミと明日の夏祭りを見て回りたいそうだ。
▼セリフ:七海
「あ、あの、去年はあのまま別れてしまったけど、そのお礼に何かしたかったんです!」
「明日の夏祭りの、何か予定はありますか?去年、あんなことがあったから一人でいくのは怖くて、よければ、一緒に…」
◆結末
 キミが約束をすると、彼女は控えめに微笑んだ。明日は8月31日。キミにとってこれからが夏の始まりだった。

●夏の怪異(PC②)
◆描写 
 夏、草木も眠る丑三時。高名な陰陽師であるPC②は海岸沿いの村で一仕事をして従者の武士と共に帰途につくところであった。すると、悲鳴が聞こえてきた。行ってみると、目の前にぼうっと紅く、人のようなものが輝いている。全身が紅く輝いて、左目が虚のように黒い妖は、するどい爪で村人に襲い掛かっている。
キミが眼の前に立ちはだかると、紅く輝く妖は、キミを見ると、その姿に似つかわしくない、少女のような声で喋りだした。
◆解説
 “サマータイム・キラー”がPC②にメッセージを伝えるシーン。
▼セリフ:武士(ぶし)*7
陰陽師PC②殿の高名なる従者のこの我にお任せ下さい。」
(妖を見て腰を抜かしながら)「あなおそろしや、ひぃぃぃぃっ!」
▼紅く輝く妖
「あなたは、PC②さんですか?」
「まさか、こんな時代から生きているなんて…。」
「そうか、PC②さんは私とまだ会っていないんですね。」
「お願いがあるんです。PC②さんと私はもう一度、夏に出会います。その年の8月31日に私が飛鳥七海という少女を殺すのを手伝って下さい。」
「なぜなら、ううっ!」
(声のトーンが低くなり)「キサマ、ジャマヲスルナッ!」
◆結末
妖が次の言葉を喋ろうとした時に、その姿は霞むように消えてしまった。
そして、千年以上経った現在。キミが紅く輝く妖怪と出会った一件は妖怪退治の物語として伝わり、今ではT市には“PC②”神社が建立されて毎年夏祭りを開いている。そして、紅く輝く妖は“サマータイム・キラー”と呼ばれる殺人者であることが判った。あれからキミ達は再会していない。今年は果たして会えるのだろうか。
●夏の日の来訪者(PC③)
◆描写
 夏、UGN沿岸都市T市支部。キミが支部に到着すると霧谷雄吾はうやうやしく礼をして向かえた。
当然だ。このT市には旧くから街に巣くっているジャームがいるのに、未だにその事件を解決できないでいる。その為に中央評議会からキミが迎え入れられ、事件が解決するまで、支部長となることになったのだ。
◆解説
霧谷雄吾から“サマータイム・キラー”についての説明と依頼シーン。
▼セリフ:霧谷雄吾
「お待ちしておりました、PC③。今回は中央評議会からお越しいただき、感謝しております。」
「では、早速ですが説明に入らせて頂きます。」
「このT市では、毎年夏になると殺人事件が起きます。犯罪の発生率としては、特に他の都市と代わりはありませんが、調査の結果、どうやらこの殺人犯がジャームであることが判明しました。」
「このT市では、“サマータイム・キラー”と呼ばれている、「夏になると紅く輝く人影が殺しに来る。」という都市伝説があります。おそらくはこの殺人事件から派生したものと思われますので、便宜上、このジャームを“サマータイム・キラー”と呼称しています。」
「また、このジャームによる事件は18年以上前から発生しており、このジャームは古代種などの特殊な能力を保持している可能性があります。現時点ではここまでです。」
◆結末
「では、調査をお願いできますか。とりあえず古代種のオーヴァードを調査してみる必要がありそうですね。」キミの方針を聞くと霧谷は「なるほど、まず決める。そして行動する。さすがです。」と呟いた。

●夏の日の研究者(PC④)
◆描写 
 夏、UGN日本支部。キミは佐上道明からの呼び出しでここに来た。調査してもらいたい一件があるのだという。研究室で席に座って待っていると、コーヒーを持って佐上義明が現れた。
◆解説
 佐上から調査の依頼を受けるシーン。
▼セリフ:佐上道明
「ああ、よく来てくれたね。まあ、座って座って…座っているね。」
(二人分のコーヒーに角砂糖を入れながら)「それで、砂糖とミルクは入るかな。ブラックのほうが好みかな…もう入れちゃったね…。」
「それでね、今回はキミにお願いがあるんだけどね、沿岸都市T市に向かってくれないかな?」
「うん、うん。実はあの街には昔から毎年夏になると現れる“サマータイム・キラー”っていう殺人犯がいてね。どうやらジャームらしんだ。しかもかなり特殊な能力を持っていてね。推測だけど時間となにか関わりがあるんじゃないかと思うんだ。」
「日本支部でも扱いに手こずって雄吾が中央評議会からPC③を召還したらしいんだけどね。キミにもPC③と一緒に協力して調査して貰いたいんだよ。」
◆結末
 キミが依頼を受けると、佐上は一部が捩れた紙の輪をもて遊んでいる。いわゆるメビウスの輪というやつだ。キミが尋ねると、「うーん。もしかしたらこれが今回のジャームと関係があるのかも知れないんだ。調査が出来次第また報告するよ。」と言って笑った。

●夏と共に現れる(PC⑤)
◆描写
 夏、キミが新聞社で記事をまとめていると、奥村英行から聞かれた。
「今年もT市に取材にいくのかね?」
キミは“サマータイム・キラー”について取材すべく、毎年この時期になるとT市に向かっていた。
◆解説
 PC⑤が取材に向かおうとするシーン。
▼セリフ:奥村英行
「毎年取材にいってるが未だに手がかりは掴めない、か。」
「まあ、警察も逮捕できないみたいだからな。しかし、毎年人が殺されているのも事実だ。」
「悔しいね。特ダネにも出来ないし、なにより犯人が捕まらないのが。」
「警察はこの件に関して情報を公開したがらない。今年は違う観点から取材してもいいかもな。」
◆結末
 奥村は「今年こそ期待しているよ。」と言うと去っていった。確かに別の観点から取材するのもいいかも知れない。今年はまずUGNを尋ねてみよう。あそこから情報が入手できれば新しい展開があるかも知れない。                 
●ミドルフェイズ
■出会い系シーン
●真夏の過去(PC①→PC②)
◆描写  
 神社で縁日が始まるのは夕方からだ。駅前のショピングモールで待ち合わせたキミは七海とショッピングを楽しんだ。会話をしている内に、七海がどうして毎年T市に遊びにくるのか、という話になった。彼女は昔T市に住んでいたが、両親が亡くなってからは遠縁の親戚に引き取られたらしい。
彼女がひとしきり話し終えると、飛鳥七海を探していたPC②が現れた。
◆解説 
ここで交換される情報次の通り。
▼セリフ:飛鳥七海
「昔はこの街に住んでいたんだけど、お父さんとお母さんが殺されたの。ちょうど夏祭りの日だったわ。」
「ねえ、“サマータイム・キラー”って聞いたことある?」
(右袖をめくって古い傷を見せながら)「夏祭りの帰りだったわ。突然紅く光る人のような怪物が現れてあたしと両親を斬り殺そうとしたのよ。あたしは重傷だったけどなんとか生きていられたわ。」
「警察はあたしの言うことを信じてくれなかった、けど忘れない。憎いわ、殺してやりたいぐらいに。」
(無理に笑顔をつくって)「だから、毎年お墓参りに来ているの。ごめんね、暗い話になっちゃって。」
▼PC①→PC②
飛鳥七海は“サマータイム・キラー”に襲われたことがある。
▼PC②→PC①
サマータイム・キラー”が今年の8月31日に飛鳥七海を殺そうとしている。
◆結末
キミ達が会話しだすと七海は「おじゃまみたいだから、一端ホテルに戻るね。夜7時に“PC②”神社の鳥居の前で待ち合わせでいいかな?」PC①が答えると「それじゃ、また後で。」と去っていった。

●夏の邂逅(PC②→PC③)
◆描写 
PC②はPC①と別れてからも“サマータイム・キラー”に会えるかも知れないと探していた。そこへ古代種を調査していたPC③と鉢合わせた。
◆解説
ここで交換される情報は次の通り。
▼PC②→PC③
サマータイム・キラー”と接触したことがあり、飛鳥七海を8月31日に殺そうとしている。
▼PC③→PC②
サマータイム・キラー”は毎年夏に現れ、18年以上前から毎年夏に人を殺している。

●夏の出会い(PC③→PC④→PC⑤)
◆描写
PC③は一端支部に戻って、情報を解析しようとした。そこへ今回の件で協力するチルドレン、PC④と、“サマータイム・キラー”の手がかりを探ってきたPC⑤が現れた。
◆解説
ここで交換される情報は以下の通り。
▼PC③→PC④、PC⑤
サマータイム・キラー”は飛鳥七海を8月31日に殺そうとしている。
▼PC④→PC③、PC⑤
サマータイム・キラー”の能力は時間となにか関係している。
▼PC⑤→PC③、PC④
サマータイム・キラー”の事柄に関して何らかの隠蔽が行われている。

■情報収集
◆飛鳥七海
<情報:噂話、ウェブ、T市> 7
 東京近郊K市在住、環境情報大学付属高校女子部の1年生。元は両親とT市に住んでいたが、8年前に“サマータイム・キラー”に両親が殺されてから、K市にいる親戚に引き取られて現在に至る。毎年墓参りの為に夏祭りの時にT市に来る。右腕に襲われた時の傷が残っており、それを隠すために普段から長袖の服を着ている、温厚で控えめな少女。
警察に“サマータイム・キラー”の目撃証言をしても信じてもらえなかったこともあって、“サマータイム・キラー”を憎んでいる。
◆“サマータイム・キラー”が残したメッセージ
<情報:学問、T市> 7
 千年以上前に、高名な陰陽師であるPC②に、“サマータイム・キラー”が託したメッセージ。“サマータイム・キラー”に接触した年の8月31日に何らかの方法で飛鳥七海を殺そうとしている。また、“サマータイム・キラー”はPC②と接触した時に以前会ったような口ぶりで話している。
◆“サマータイム・キラー”
<情報:裏社会、学問、警察、UGN、T市> 7
T市で古くからある都市伝説。内容は「夏になると紅い人影が殺しにやってくる。」というもの。
“PC②”神社の伝承によれば千年以上前からあった伝説となる。
現在はUGNの調査でジャームである可能性が高いと見られている。その正体は一切不明である。また、“サマータイム・キラー”はその時々において少女のような声と、低い声の二通りで喋ると言われている。まるで人格が変ったかのように。
◆殺人事件
<情報:噂話、報道、警察、UGN、T市> 7
 T市では毎年夏に、“サマータイム・キラー”による殺人事件が発生している。
この事件はジャームが殺人犯であることが判明してからは、警察の協力によって犯人の目撃情報などは隠蔽されている。レネゲイドウイルスの存在を公にしないためだ。
また、それによって都市伝説として噂が逆に広がってしまったという一面もある。
◆時間に関係した能力
<情報:学問、UGN、T市> 7
サマータイム・キラー”は千年以上前に目撃情報があるにも関わらず、その痕跡は一切残っていない。また、毎年夏になると現れて、それ以外の季節では全く目撃されていないのも奇妙だ。
 “サマータイム・キラー”が最初にPC②と会った時に、既に出会っていたような発言をしている。PC②が認識していない、別の時間、別の場所で既に出会っていたのではないか。
■トリガーイベント
●友情はロイスよりも深く(PC①)
出会い系シーンを全て終えると発生する。
◆描写 
PC①は夜まで時間を潰すためにショッピングモールで散歩をしていると、携帯が鳴った。相手を確かめてみると武士からだった。
◆解説
武士から、神社に伝わるならわしを聞くシーン。
▼セリフ:武士
「もしもし、PC①?今夜の祭りと花火大会どうする?暇ならまた俺と彼女とお前の三人で行こうと思ってるんだけどさ。」
「ええっ!おまえ彼女できたのっ?!去年一緒に写真とったあのかわいい娘か。」
「で、どこまでいったのよ?」
「なんだ、まだデートだけかよ。いいこと教えてやろうか?“PC②”神社には昔から伝わっているならわしがあってさ。」
「夏祭りの時に神社の裏で花火を見ながら告白すると、そのカップルはうまくいくんだぜ。」
「ホントだって!俺が今の彼女と付き合っているのもちゃんと一昨年の花火のときに告白したからだよ!」
「うちのご先祖様は神社に祭られている陰陽師の従者だったらしいからな。*8その子孫の俺が言うんだから間違いないって。」
「あ、彼女からメール着たわ。じゃあな、ちゃんと告白するんだぞ!」
◆結末
武士は言うだけ言って通話を切った。どこかはらただしいのは、きっと核心をついているからだろう。七海の事をふと考えてから、キミは勇気を振り絞ってみようと思った。
●再び彼女と(PC②)
サマータイム・キラー”、“サマータイム・キラー”が残したメッセージを調べると発生。
◆描写
 夕方。PC②は“サマータイム・キラー”を探しているうちに、町外れの墓地にたどり着いた。静観な雰囲気に包まれてはいるが、よく墓石を見てみると夏に亡くなった人が多いのが分かる。“サマータイム・キラー”がこの街に刻んだ歴史の爪跡を感じていると、時が止まった。明らかにワーディングだ。その場所にたどり着くと、そこには全身を紅く輝かせ、虚のような黒い左目の“サマータイム・キラー”がするどい爪で少年を襲おうとしているところだった。
◆解説 
PC②が“サマータイム・キラー”と再び出会うシーン。なお“サマータイム・キラー”がPC②と出会うのはこれが初めてである。
▼セリフ:少年こと武士
(腰を抜かしたまま止まっている。)
サマータイム・キラー
「シネ…スベテシンデシマエ…」
(名前を呼ばれると)「グッ…ジンカクガイレカワル…」
(少女の声になって)「何故、あたしが“サマータイム・キラー”だと知っているんですか?」
「あたしはあなたにとって過去、あたしにとっての未来で会っているんですね?」
「あたしは今年の8月31日の夜に、飛鳥七海を殺しにいきます…、も、もうだめ!抑えられない!もう一度、あなたに会ったら必ず真相を話します!」
(声のトーンが変って)「シネッ!ジカンヲタダヨウクルシミヲシラナイモノハシンデシマエッ!」
◆結末
サマータイム・キラー”がするどい爪を振り上げようとすると、その姿は霞むように消えてしまった。どうやら能力を完全には制御してはいないようだ。記憶のない武士を介抱すると、キミはこの場を去ることにした。祭りばやしが聞こえてくる。時間は刻々と近づいているようだ。
ロシナンテの結論(PC②、PC③、PC④、PC⑤)
情報収集を全て終えると発生
◆描写
PC④の元に佐上から連絡が入る。「とりあえず、推論だが、今回の事件の背景が分かった。今回の事件に関係しているオーヴァードを全てT市支部に集合させてくれ。ただし、PC①は呼ばないように。」
かくしてキミ達はT市支部に集合した。会議室に着席して待っていると佐上が入ってきた。
◆解説 
佐上が、“サマータイム・キラー”に関して推論を喋るシーン。*9
▼セリフ:佐上
「うん、うん、良く来てくれたね。まあ座って・・・座っているね。」
「とりあえず、推論がまとまったから話しておこうとおもってね。」
「じゃあ結論から先に言おうか。“サマータイム・キラー”は時間を跳躍する能力を持っている。いわゆるタイムトラベラーというやつだ。」
「この世界では全てのものが過去から未来へと時間を過ごしている(図1参照)。」

図1
過去────→未来(番号順に時間が経過する。)
春① ⑤ ⑨ ⑬
夏② ⑥ ⑩ ⑭
秋③ ⑦ ⑪ ⑮
冬④ ⑧ ⑫ ⑯

「しかし、“サマータイム・キラー”はどうやら夏をランダムに時間跳躍して出没してるようなんだ(図2参照)。」

図2
過去────→未来(●は“サマータイム・キラー”が現れた時間を表す。)

夏● ● ● ●

「まず、夏にしか目撃されないこと、そしてPC②の目撃証言からも彼女が時間移動をしていることは明確だ。」
「そして、PC②が最初に“サマータイム・キラー”と出会ったのは千年以上前だったね。そのとき“サマータイム・キラー”はその年の8月31日に出会うといって、今日また出会った時に、夜にまた出会うと言っていたそうだね?」
「つまり、彼女は一定の流れで時間跳躍をしているのではなく、ランダムに時間跳躍をしているという結論になるんだよ(図3参照)。」

図3
千年前─────→8月31日夕方─→8月31日夜(番号順に時間跳躍をしている。)

夏 ②          ①           ③

「ここまではいいかな?じゃあ、これから本題に入ろうか。」
「そもそも時間をここまで跳躍できる能力が発見されたのは初めてだ。つまりは時間跳躍能力の起源種(オリジン)と言えるだろう。」
「ここで大事な事なのだが、レネゲイドウイルスは感染する可能性がある。つまり、“サマータイム・キラー”がこれだけ広範囲の時間に渡って活動していれば感染者、つまりは時間跳躍する者がもっと出てもおかしく無い筈なんだ。」
「しかし、“サマータイム・キラー”以外には時間跳躍能力を持った者は発見されていない。」
「この資料を見てくれ。“サマータイム・キラー”から攻撃、つまりは感染する可能性が明確なほどの接触をした者のリストだ。全員死亡している、たった一人を除いてね。」
◆描写2
その資料に載っている人物は殆どが死亡と書かれていたが、ただ一人だけ違っていた。
「飛鳥七海、右腕裂傷。後日完治」
▼セリフ:佐上
「PC④、だからPC①をここへ呼ばなかったんだ。彼は飛鳥七海と個人的に親しいそうだね?」
「彼女はおそらく過去に接触した時点で“サマータイム・キラー”のウイルスに感染している。そして、“サマータイム・キラー”が飛鳥七海を殺そうとしている今日の夜に、おそらくは“サマータイム・キラー”としての能力が発現する。」
メビウスの輪を取り出して)「原因と結果が一緒だって?そう、これは“サマータイム・キラー”が時間を繋げて作り出したねじれたメビウスの輪なんだよ。」*10
「更にいえば、今の彼女をどうにかして、例えば監禁して行動を阻害する、などして置くことは出来ない。タイムパラドックスという言葉は聞いたことがあるだろう。」
「彼女がどうやって“サマータイム・キラー”になるのか知らない我々が迂闊に手を出せばどのようなパラドックスが起きるか誰にも判らないんだ。」
「しかし、出来ない事が無いわけではない。」
「彼女を監視して、“サマータイム・キラー”になる現象が発生した時にそれを防止するか、あるいは彼女が“サマータイム・キラー”になった後で時間跳躍を始める前に、殺すかだ。」
「いずれにせよ。その場合、彼女がどうなるかは判らない。なにせ、タイムパラドックスを観測した者が誰もいないからね。もしかしたら、飛鳥七海という少女そのものが最初から「いなかった」ことになるのかも知れない。」
「もしかしたら、それを彼女、いや“サマータイム・キラー”も望んでいるのかも知れない。」
「レネゲイドウイルスの能力というものは人間の想いに強く影響される。本来ランダムに時間を跳躍できる筈なのに、季節が夏に限定されているのも、彼女が“そこ”へ向かおうとしているからではないのかね?」
◆結末
佐上が一息つくと、そこへ霧谷雄吾が入ってきた。
「特殊な能力を持っている我々オーヴァードも、こと時間に関しては人間と同じく無力です。出来ることは本当に少ない。」
「しかし、今も飛鳥七海という少女はジャームとなってからも、懸命に運命と戦おうとしている。我々はその気持ちに応えるべきでしょう。」
霧谷雄吾はPC一人一人に対して頭を下げて回る。
「PC②、あなたの長い時間を生きてきた経験がぜひとも必要です。」
「PC③、支部長として今回の事件を解決するためにもお願いします。」
「PC④、複製体であるキミならば、同じ存在であるものを殺そうとする彼女のつらさがわかるでしょう。」
「PC⑤、今回の件を記事にしてもらうわけにはいけませんが、この事件の最大の被害者である彼女の為にも、力を貸してもらえませんか?」
PC達が依頼を受けると、外は夜の帳に包まれ始めていた。
●クライマックスフェイズ
●今年、最後の夏の日に(PC①)
◆描写1 
 夜7時─。“PC②”神社の鳥居で待っていると、七海は息を弾ませてやってきた。長い髪を三つ編みにまとめて、紺に朝顔の柄の浴衣を着ている。彼女と縁日を回ると、気のせいか見知った顔が多くいるような気がする。キミはそれが“サマータイム・キラー”を監視するためにUGNが多数の人員を紛れ込ませていることには気づかない。
◆解説 
七海と縁日を回るシーンと神社裏の高台で告白するシーンに別れている。
▼セリフ:七海
(浴衣を見せるようにPC①の前で回りながら)「着付けに手間取っちゃたけど、似合うかな?」
(頬を染めて)「PC①君も…かっこいいよ。」
▼縁日の出店に偽装したUGN*11
金魚すくい
(料金を受け取りながら)「この金魚はあなたにしか救えません。お願いしますよ。」
▼射的
(ライターを取った客に対して)「射撃技術だけじゃダメだ。他のこともちゃんと学べよ?」
▼くじ
(外れた客に対して)「せいぜい金を出してくれたまえ。我々のために。」
▼型抜き
(失敗した客に対して)「ふふっ。じゃ、次の型抜きね。」
▼綿飴
(必死に綿飴をつくりながら)「この屋台さえ成功させれば、私はまた……!」
◆描写2
 ひとしきり縁日を回ったところで、キミの携帯に武士からメールが来た。それを読んで決意が固まった。二人で神社裏の高台に向かう。人気はなく、海からの潮風が吹きぬけていく。浴衣の袖と髪をなびかせる七海の姿はとてもきれいだ。二人を祝福するかのように、夜空に大輪の花が咲き乱れている。
▼セリフ:武士のメール
「いいか、花火大会の時に告白するんだぞ!」
▼七海
(高台から海を見て)「うわぁ・・・」
「あ、あのPC①くん。あたし、去年会ったときから・・・」(恥ずかしがって小声になる)
(PC①が告白すると)「え、あたしの、こと・・・?」
◆結末
キミが告白すると、また花火が上がり、夜空に咲いた。彼女が応えようとした時に、キミは奇妙な事に気づいた。花火が夜空で止まっている。いや、止まっているのは花火だけではない。潮風も、波も、人々も、それどころかキミも動けない。全てが止まった世界の中で、海面に花火が一つ浮かんでいた。よくみるとそれは花火ではない。止まった海面に“サマータイム・キラー”が立っていた。
●永遠の刹那(マスターシーン)
◆描写
 全てのものが動かなくなった。花火も、風も、人も、時も、PC達も。凍ったように硬くなった海面を全身を紅く輝かせながら、虚のように黒い左目で飛鳥七海を睨んで“サマータイム・キラー”は走っている。オーヴァードすら動けなくする、完全な時間停止(ワーディング)。“サマータイム・キラー”だけではなく、もう一人の協力者がいるからこそ出来る離れ業だった。
◆解説
サマータイム・キラー”が飛鳥七海を殺そうとして返り討ちに逢うシーン。
▼セリフ:“サマータイム・キラー”
(低い声で)「シネ…シネ…」
(少女の声に変って)「そう、あなたはここで死ななければいけないの。」
(また低い声で)「シネ…シネ…」
(少女の声に変って)「今度こそ成功させるわ。必ず。」
▼七海
「一日だって忘れたことは無かったわ!お前が父さんと母さんを殺したのよ!」
◆結末
その時、たった一人の人物が動いた。時間が停止している中で動けるのは、同じ能力を持ったウイルスに感染した者だけだ。そう、怒りで自分の能力に目覚めた飛鳥七海も時間を止めてから高台の崖を滑り降りて、そのするどい爪で“サマータイム・キラー”に襲い掛かる。
砂浜で二つの影が交差し、七海の爪は“サマータイム・キラー”の心臓を、“サマータイム・キラー”の爪は七海の左目を貫いていた。
●時間と運命を超える為に(全員登場)
◆描写
 時間は止まったままだがPC達は動けるようだ。キミ達がたどりつくと、七海は左目を押さえている。そして、“サマータイム・キラー”の紅い輝きが消えていき、そこには紺に朝顔の柄の浴衣を着た飛鳥七海が現れた。
心臓を一撃で貫かれており、最早助からない。
◆解説
 “サマータイム・キラー”が全ての事情を話してから死に、七海が“サマータイム・キラー”となるシーン。
▼セリフ:“サマータイム・キラー”
「やっぱり、こうなっちゃうんだ…」
「そう、これが始まりだったの。あたしはかつての飛鳥七海。今日、両親の仇を討って“サマータイム・キラー”を殺したときに、その正体が自分だと気づいてから、哀しみと絶望のあまり、時間を越えながら衝動のままに人を殺す、精神のジャーム“サマータイム・キラー”を宿して、ここまで過ごしてきたの。」
「普段は“サマータイム・キラー”に身体を支配されて、殆ど動けないあたしにとって、この運命を止めるチャンスはここで七海を殺すしかなかったの。だからずっと祈っていた、「あの夏に帰りたい」って。今日、“サマータイム・キラー”があたしを殺しにくるのは過去に知っていたから。」
「運命を変える為に少しだけど頑張ったわ。PC②という人を知ってメッセージを送ったりもした。」
「ほんの少しだけど運命は変ったわ。あたしの記憶だと、七海はこれからPC①さんを衝動のままに殺してから時間跳躍を始めるわ。その時は砂浜にはPC①しかいなかったから。」
「けれど、今回は違うわ。これだけの人が集まってくれた…。お願い、あたしが時間を漂いながら人を殺したりすることがないように、”サマータイム・キラー”を、あたしを殺して下さい。」
「何も見えなくなってきちゃった…。ねぇ、PC①さん。あたしがここに戻りたかった理由はもう一つあったの。」
「あたしも…大好き…。」(彼女はここで息をひきとる)
◆描写2
サマータイム・キラー”は倒れた。しかし、時は動かない。“サマータイム・キラー”を見て全てを知った七海の身体がゆっくりと変っていく。彼女の周囲に高重力の壁が発生し、その身体は紅く輝きだす。*12貫かれた左目にはバロールの特徴を現す、虚のような黒い魔眼があった。七海は“サマータイム・キラー”となって衝動のままに襲ってくる。戦うしか術は無い。
▼セリフ:七海
「あ、あたしだったの…。あたしがお父さんとお母さんを殺した“サマータイム・キラー”だったの?」
(全身を紅く輝かせ、声の調子を変えながら)「あたしが、あたしが…ナンデ、ナンデアタシガコンナメニ、ユルセナイ…」
■注意
このシナリオはある条件でエンディングが3種類に分岐します。
条件は、
①・PC①が飛鳥七海のロイスを保持している。
②・PC①が飛鳥七海のロイスをタイタスに変えて昇華している。
③・エンディング時にPCの誰か一人でもジャームになってしまったものがいる。
です。戦闘を開始する前にこの事は必ずPLに説明して下さい。
NPCデータ
サマータイム・キラー”飛鳥七海(あすかなつみ)
「ナンデ・・・ナンデワタシダケガ・・・」
サマータイム・キラー”に感染した少女。衝動のままに人を殺す人格に操られている。
*13
■DATA:
●シンドローム エグザイル/バロール
●コードネーム:サマータイム・キラー
●能力値   技能
【肉体】 4<白兵>5
【感覚】 1
【精神】 6<RC>5
【社会】 1<情報:噂話>1
【HP】20(120)  【イニシアティヴ】8
●侵食率 200% (シンドローム+3LV)
●Dロイス 「起源種」、「戦闘用人格」*14
●取得エフェクト<暗黒の衣>4、<暗黒螺旋>5、<時間調律>、<灰色の庭>5、<世界の抱擁>5、
<斥力結界>5、<ワームホール>5、<呪われし物の印>5、<爪剣>5、<オールレンジ>5、<貪欲なる拳>5、<マルチアタック>5、<魔王の理>5<時間凍結>、<時の棺>、<透過>5、<融合>、<生霊化>
<ヴァイタルタップ>、<ダブルスクラッチ>、
※レベルは全て侵食率の修正済である。
●コンボデータ
セットアップフェイズは<時間調律>+<ヴァイタルタップ>+<灰色の庭>で1体のイニシアティブを-15下げつつ、自身のHPを120に。
最初のメジャーアクションで<ダブルスクラッチ>+<暗黒の衣>+<爪剣>を宣言。
素手の攻撃力が
攻撃力:+5
防御力:+7/+6
となり、防御力は20点となりますが、[避け]に2個のダイスペナルティーを受けます。そして最初のマイナーアクションで移動して、PC達と接敵して下さい。
セカンドアクションは<呪われし物の印>でHPを25点回復します。
リアクションは<白兵>なら<暗黒螺旋>を宣言して、相手に25点のダメージを与えつつ、自分もダメージを受けます。それ以外は<魔王の理>+<斥力結界>+<RC>で回避。振るダイスは10個、クリティカルは7になります。
2ラウンド目の最初に<時間凍結>を宣言して最初に攻撃。<白兵>+<マルチアタック>+<オールレンジ>+<貪欲なる拳>で攻撃。振るダイスは14個、クリティカル値は7、防御行動のクリティカル値を+5します。2回目以降の攻撃は<マルチアタック>が使用できなくなるので、防御行動のクリティカル値は通常通りです。
相手の攻撃には、<時の棺>、<透過>も使用して対応して下さい。
◆結末
サマータイム・キラー”となった七海が倒れると、その身体は霞むように消えていく。そして、既に死んでいたもう一体の死体も同じように消えていく。「ドーン!」という大きな音が聞こえてきた。花火が鳴っている。時間は元に戻ったのだ。(ここでシーンを終了させて個別エンディングに移って下さい。)
●エンディング&アフタープレイ                 
■エンディングの描写
各キャラクターごとにエンディングのガイドラインを掲載する。
 なお、エンディングの全てのPCの状況は*15
①・PC①は飛鳥七海のロイスを保持している。→“サマータイム・キラー”は最初からいなかったことになっている。T市には都市伝説も存在していないし、”サマータイム・キラー”による被害も発生していない。PC達だけがその事を憶えている。
②・PC①は飛鳥七海のロイスをタイタスとして昇華している。→サマータイム・キラー”は最初からいなかったことになっている。T市には都市伝説も存在していないし、”サマータイム・キラー”による被害も発生していない。PC達にも最早記憶が無い。
③・エンディング時にPCの誰か一人でもジャームになってしまったものがいる。→ジャームとなったPCは”サマータイム・キラー”となり時間跳躍を初めて、衝動のままに人を殺し続けることになる。悲劇は繰り返される。
となっています。エンディング開始前にPL達に説明すること。例として①の場合の演出例と③の場合の演出例を以下に掲載します。GMはシナリオの結果によって演出を適宜変更すること。

③の場合
●真夏の夜の輪舞(ジャームとなったPC)
■描写
 砂浜から飛鳥七海と”サマータイム・キラー”の死体が消えうせた。全ては終わったのか?
 いや違う、また始まるのだ。その証拠に”ジャームとなったPC”の心の底で声がする。
それは押さえきれない程の大きさとなり、”ジャームとなったPC”の意識を呑み込んだ。
▼セリフ:”サマータイム・キラー”
「オマエハモウニゲラレナイ。コレダケオーヴァードガイタノニオマエダケガオレニカンセンシタ。コレカラジカンヲサマヨウノダ…」
「ナゼ・・・ナゼオレダケガ・・・」
■結末
 あれからどれだけの時間が流れただろうか。キミは”サマータイム・キラー”に支配されつつ無限の夏をさまよった。その間に七海がしたようにPC②にもメッセージを伝えたし、”サマータイム・キラー”が暴走して七海の両親を殺して、七海を傷つけるのも体験した。時が止まり、花火が夜空で停止しているのを感慨深く見る。今度こそ”サマータイム・キラー”を滅ぼさねばならない。その為にも飛鳥七海とウイルスに感染するおそれのある過去の自分を殺さねばならない。キミは未来に向かって踏み出した。
─悲劇は繰り返される。─ 

①の場合
●書けない記事(PC⑤)
◆描写 
 キミがT市からデスクに戻ると奥村英行が渋い顔をして待っていた。
▼セリフ:奥村英行
「ところで、T市に出張していたようだが、夏祭りの取材を許可した覚えはないんだけどね。あんな何もない街に夏休みかね?」
(説明すると)「“サマータイム・キラー”?なんのことかね?」
■結末
 どうやら、あの一件で、“サマータイム・キラー”は最初からいないことになってしまったようだ。
●ほどけた輪(PC④)
◆描写 
 本部に戻り、佐上の下に報告に行くと、不思議そうな顔をして佐上はうなっていた。
▼セリフ:佐上
「うーん。僕はT市に調査なんて頼んだ覚えはないんだけどなぁ。」
「まあいいや。キミは普段から忙しそうだし、いい夏休みになったでしょう。」
「そうそう、何故か知らないけど僕のデスクにメビウスの輪が置いてあるんだよ。何か知らないかな?」
■結末
キミはどう説明しようか悩んでいた。
●さらば、T市(PC③)
◆描写
 キミがT市支部を出ようとすると、霧谷が呼びかける。
▼セリフ:霧谷
「今回はなぜ、このような特に事件もないT市などに来られたのですか?」
「今年は穏やかな夏でしたよ。特に事件もありませんでしたし。」
■結末
 確かにT市は平和になったようだ。キミが去ろうとすると、秋を予感させる爽やかな風が吹いてきた。
●時の過ぎ行くままに(PC②)
◆描写
 神社は、昨日の喧騒が嘘のように静かになっていた。どうやらこの街の歴史は変ったようだ。境内では神主の老人が穏やかな顔をして座っている。
▼セリフ:老人
「おや、夏祭りも終わったのに参拝客とは珍しい。」
「この街は昔から平和なもんですよ。夏祭りしか楽しむものがない。この「武士(たけし)神社」も今年は大晦日までずっと暇ですよ。」
■結末
 最早この街を訪れることもないだろう。キミがもう一度神社を見てみると、爽やかな風が吹いてきた。
●そして、秋が始まる(PC①)
◆描写
 9月1日の始業式。教室は平穏な日常そのものだったがキミの心には悲しみがあった。七海の死体がどこに消えたのかわからずじまいだったからだ。すると、親友の武士が話しかけてきた。
◆解説
PC①のエンディング。七海と出会うシーン。
▼セリフ:武士
「PC①、今年の夏も彼女出来なかったよ〜!」
「ウチの神社ご利益ないのかなぁ。ご先祖様は陰陽師と一緒に酒呑童子を倒して神社に祭られているほど偉いのになぁ。」
「おまえはいいよな。可愛い彼女がいるからな。」
◆描写2
教室の扉が開いて、そこには制服を着た七海が立っていた。その時、キミは全てを悟った。“サマータイム・キラー”がいなければ、彼女の両親も殺されたりはしないし、彼女がジャームになることもない。同じ高校に通っている未来もありえたのだ。すると武士が「お、噂をすればなんとやら、邪魔になるといけないから退散するわ。」と言って席を外した。武士が去った後で七海はこういった。
◆結末
「おはよう、PC①君。」
そして耳打ちするようにもう一度言った。
「忘れてないよ、助けてくれてありがとう。」
教室の窓から風が吹いた。心が枯れるほどの熱い夏は過ぎ、実りの秋の豊かな風が。
恋人同士の新しい物語が始まろうとしていた。
■アフタープレイ
エンディングまで終了したところでこのシナリオは終了する。ルールに従って、アフタープレイの処理をしていくこと

*1:イメージとしては、「東京まで電車で2〜3時間かかり、映画を見にいくには県庁所在地にいかないとならない」ぐらいの地方都市で。

*2:DX・p41参照

*3:DX・p194参照

*4:クライマックス「時間と運命を超えるために」で”サマータイム・キラー”が説明している、自分が”サマータイム・キラー”として目覚めたシーンです。PC①のPLが戸惑うようでしたら「この後に本当のオープニングがあります。」「このシーンの意味はアクトが進むとわかります。」と説明して下さい。

*5:PC①はシーンが終了する前にリザレクトを行い、HPを回復すること。

*6:どんなカンジですか、とPLに聞かれたら『エキストラの美少女です。』ときっぱり答えてください。

*7:この時代には本当は武士という言葉はありません。正しくは侍。まあネタということで。

*8:武士はPC②のOPに出てきた従者の子孫である。PC②が見ると顔も先祖と殆ど同じであることが分る。

*9:このシーンは今回のシナリオのギミックを説明するシーンなので佐上の台詞が多くなっています。GMがずっと喋っているとPLが退屈してしまうので、適宜区切りのいいところでPLのリアクションを待って会話するようにしてシーン進行を心がけたほうがいいでしょう。

*10:いわゆる「鳥が先か卵が先か」というやつ。

*11:DX・p41〜p45参照。本当にそうかどうかはセッションに参加している皆さんで決定して下さい。演出が好みでなかったり、雰囲気にそぐわなかったりしたら飛ばしてもOKです。

*12:ドップラーシフトで周囲の可視光線赤方偏移します。

*13:なお、<生霊化>と<融合>はそれを表しているが、データは1体のジャームとして扱うこと。<生霊化>は本来、平安京物怪録専用エフェクトであるが、特例として入れてある。もしPLに何か言われたら「ちゃんとPC②のオープニングで平安京に出ている。」と説明して下さい。

*14:戦闘用人格はデータ的にはメリットはありません。“サマータイム・キラー”が精神のジャームであることを表すものです。

*15:もちろんベストエンディングは①です。間違ってもGMから誘導して③に至ることが無いようにして下さい。