300(スリーハンドレッド) (Shopro world comics)

300(スリーハンドレッド) (Shopro world comics)

今、日本語版「300」を読み終えた。

まず思ったのが、「映画を見る前に読めて良かった」
ということだ。

http://wwws.warnerbros.co.jp/300/index2.html
とにかく、ここで映画の予告を見たときは「ヤヴァいっ!!」
と思った。

ビジュアルが素晴らしい映画であるが故に、
「映画だけで満足して、原作に触れずに面白さを吹聴する連中がペルシアの侵略軍のように押し寄せる」
と直感したのだ。

そうではない。
やはり、まず原作ありきなのだ。
それぐらい「300」のコミックスは素晴らしい。

僅か86頁の中に古代の戦士の物語が凝縮して、紀元前の男達の槍が時代を超えて読者の脳を貫いてくる。

そして知っている方も多いと思うが、フランク・ミラーは日本の劇画、特に小池一夫に傾倒している。

その結果、皮肉なことに日本では誰も引き継ぐものがいなくなってしまった小池一夫の時代劇画を見事に取り入れ、「シン・シティ」などの傑作を次々と発表した。

その男がアメコミでは稀有なノンフィクション歴史コミックを書いたのだ。
しかもスパルタ人の話だ。
解説にも書いてあるように西洋文明の分岐点とされてる時代のコミック化である。

その映画が日本に上陸する。
これはフランク・ミラーの凱旋である。
日本の武士道と小池一夫を愛し、それを作品内で西洋文明と融合し得た男が、日頃マンガを読みなれている我々日本人に対して仕掛けた「戦争」でもある。

このままでは、我々は無慈悲にも映画のみを見て、それを無自覚に受け入れるという
「敗北」
を喫するところであっただろう。

 だが我々には時間が与えられた。
映画公開より先に原作が発売されたことで、
原作を読み、原作を読んで各々が得たものを槍として、この映画が原作とどう違い、また映画というメディアに変換されたことによって何を得たのかを冷静に判断するという盾すら持ちえたのだ。

後はこの作品を見る志だけである。

 アルカディア人の戦士が己の生業を聞かれて「パン屋」と答えたように、原作を読まずに時間潰しにアクション映画を見に来ただけの客となるか?

 スパルタ人が己の生業を尋ねられた時に槍を掲げたように、原作を読んでから覚悟してこの映画に取り組むか?

 エフィアルタスのように父から戦士の心得を授かったと言いながら左手で盾を構えることが出来なかったように、映画を見ただけで原作を読まずしてただ面白さを吹聴するか?

後は各自の判断に委ねることにしよう。

改めて読んで思ったのはフランク・ミラーの画面構成はマジ素晴らしい。

特に1章の「行軍は続く」のところは見開き一枚で軍勢を取り巻く希望と絶望を描ききっているので震えが走りました。